【16】 sudden point

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. 「……ゲネプロ、順調?」 「まあ、もうすぐだからね。本番楽しみにしておいてよ。」 初めて出逢ったころから変わらない表情。 音楽に対して彼は、いつでも自信に溢れている。 「もちろん、楽しみですとも。」 いっちゃんの参加するオケは、毎回きちんと聴きに行っている。 学生のころから、彼の弾くバイオリンが本当に好きだったから。 「前みたいに、公演時間を見間違えないようにしてね。」 「あっ……あれね! でも間に合ったんだから、いいじゃん。」 「ほんと、唯はそそっかしいところあるから。放っておけないな。」 そう言いながら、寝そべりながらソファーを陣取っていると、目の前にいっちゃんが座る。 彼が伸ばした大きな手がそっと頬に触れると、まるで飼い主にあやされている猫のように、私はその優しさに甘える。 「唯は練習どう? なかなか苦戦しているみたいだけれど。」 「そうだね……。まあ、公演までには何とかなるよ。」 いつも何だかんだ言いながらも、最後はそれなりに上手くいくことを、私は身をもって何度も経験している。 だからこの時も、そんな風に軽く考えていた。 .
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