【16】 sudden point

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. 「また練習ばっかりして。少しは休憩しなよ……ほら、おみやげ。」 昨日より少し帰りの遅かったいっちゃんが、寄り道をして買ってきてくれたチーズケーキ。 自分では満面の笑みで、それを受け取っているつもりだった。 それなのに…… 「……なんか、あったの?」 「え……?」 あまり深くは考えないようにしていた、昼間の一件。 いっちゃんには関係のないことなのだから猶更だ。 私の考えすぎな心配に彼を巻き込みたくはなかった。 「……ちょっと、練習疲れちゃったかな。」 困ったように微笑みながらそう言った。 その言葉に嘘はなかったし、しっかりと視線を反らさずに話した私の言葉を、彼は真っ直ぐに信じて受け止めてくれる。 「そっか……。お互いに公演が終わったら、どこか近くに旅行でもしようか。」 「うん。海がきれいな街がいいな……。ベネチアとか。」 春がやってきて温かくなり、陽気な日差しの下にいる未来の自分を想像すると、穏やかで幸せな気持ちになる。 隣にはいっちゃんがいて、こんな風に優しく手を繋いでくれて。 「……春がくるのが待ち遠しいね。」 「うん……その為にも、頑張らないと。」 自分に言い聞かせ、今日の分を取り返すためにも、明日からまた頑張ろうと心に誓った。 この静かで穏やかな毎日を、これからも続けていられるように。 .
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