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あれから何度か同じような状況に陥ったが、こまめに休憩とするようにして、無理な練習は控えるようにした。
すると日に日に指が固まる頻度は少なくなり、やっぱり過度な練習が原因の軽い腱鞘炎の類だったのかと納得した。
そして1週間が経ち、慶子さんに練習を見てもらう日がやってきた。
これが最後の機会。
次にこの演奏を彼女の前で披露するのは、本番なのだから。
超絶技巧を含めた2曲目までを無事に弾き終え、苦手なフレーズも練習で克服して、たったひとつの不安の種も消えかかっていた。
自分でも満足いくような演奏ができ、あとは最後の曲。
いちばん得意なショパンだ。
深く息を吸い込んで気持ちを落ち着かせ、音楽に入り込む。
得意な曲とはいっても、指を動かすリズムが少しでもずれたら誤魔化しがきかず、ボロボロに崩れてしまう難曲だ。
それでも得意だと言ってきたのは、学校の課題や発表で、昔から何度も弾いてきた曲だからだ。
それなのに…………。
「………唯ちゃん?」
そう難しくもないフレーズで、また指が固まってしまう。
普段なら、よそ見をしながらでも弾きこなせるくらいなのに。
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