【16】 sudden point

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. 「あなたが唯さんね、慶子から話は聞いているわ。指の具合が良くないと聞いているけれど、詳しく聞かせてもらえるかしら。」 「……はい。実は……」 ここ数日間の出来事を、包み隠さずに全て話した。 公演が近くていつも以上に練習量を増やしていたこと。 突然に指が固まったこと。 毎回ではないけれど、何度か同じようなことが起きたこと。 彼女は真剣な表情で、私の話を最後まで聞いてくれた。 「唯さん……。」 「はい。」 「ちゃんと検査をしてみないと断定できないけれど……痛みや痺れがなく、そういうことが頻繁に起こるとなると、 もしかしたら……ジストニアの可能性があるわ。」 「え……?」 「まだ、そうだと決まったわけではないのだけれど……可能性のひとつとして……」 ピアノを長くやっている人間なら、誰もが一度は聞いたことのある病気。 腱鞘炎などと違って一般的に痛みを伴わないのが特徴で、そして………。 「とにかく検査をしてみて、それから………」 「わたし……弾けなく、なるんですか……?」 リサさんの言葉を遮り、まず頭に浮かんだ不安を口にする。 ジストニアは神経の病気とも言われていて、完治するための治療法がまだ見つかっていないのだ。 .
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