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「あなたが唯さんね、慶子から話は聞いているわ。指の具合が良くないと聞いているけれど、詳しく聞かせてもらえるかしら。」
「……はい。実は……」
ここ数日間の出来事を、包み隠さずに全て話した。
公演が近くていつも以上に練習量を増やしていたこと。
突然に指が固まったこと。
毎回ではないけれど、何度か同じようなことが起きたこと。
彼女は真剣な表情で、私の話を最後まで聞いてくれた。
「唯さん……。」
「はい。」
「ちゃんと検査をしてみないと断定できないけれど……痛みや痺れがなく、そういうことが頻繁に起こるとなると、
もしかしたら……ジストニアの可能性があるわ。」
「え……?」
「まだ、そうだと決まったわけではないのだけれど……可能性のひとつとして……」
ピアノを長くやっている人間なら、誰もが一度は聞いたことのある病気。
腱鞘炎などと違って一般的に痛みを伴わないのが特徴で、そして………。
「とにかく検査をしてみて、それから………」
「わたし……弾けなく、なるんですか……?」
リサさんの言葉を遮り、まず頭に浮かんだ不安を口にする。
ジストニアは神経の病気とも言われていて、完治するための治療法がまだ見つかっていないのだ。
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