【16】 sudden point

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. 途中から彼女の言葉が耳に届かなくなった。 それほどに告げられた現実がショックだったのだ。 完治しない病気だとは知られていても、緩和させるための投薬療法やトレーニングがあることは知っている。 病気を持ちながらも演奏家をして活躍している人は沢山いる。 けれども今までのように練習を続けていれば、他の指も同じ状況になり兼ねないのも事実。 「唯ちゃん……。」 慶子さんが部屋に入ってくる。 私の様子から、彼女はきっと全てを察していたのだろう。 「わたし……弾けなくなったら……なにも、なくなっちゃう………」 「……大丈夫よ。弾けなくなんかならない……」 「何もなくなっちゃうよ!!」  パニックで溢れてきた感情と涙が止まらない。 泣いたって仕方ないのは分かっている。 それにまだ、ジストニアだと判明したわけではないのに。 自分自身が僅かな可能性を信じなければ、何も始まらないというのに。 幼いころから積み上げてきたピアノにかかわる大切な思い出が、一気に崩れ去ろうとしている。 私には夢があったから、辛いことも乗り越えてやってこれた。 私にはこれしかないのに。 お母さんや雅さんと繋がっていられる方法も。 前だけを向いて歩いていこうと決めた決心も。 忘れられない人を、心の奥にしまっておく方法も……。 何もかもを失った気持ちになって、目の前が真っ暗になった気がした。 .
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