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「だって……これは、私の問題だから……」
「どうして、そんなに他人行儀なんだよ。俺じゃ頼りなかった?」
「そうじゃないよ、ただ……心配かけたくなくて……」
「心配くらいかけさせろよ!!」
怒りにも似た彼の声が響き渡る。
それに対しての恐怖は全くなかった。
それ以上に怖いのは目の前にある現実。
指が動かなくなり、夢を失うこと。
「それとも何? 俺たちって、その程度の関係だったわけ?」
「……。」
「苦しみや辛さと分かり合いたいっていうのは……俺の、勝手なひとりよがりなの?」
そんなことないよ、って。
それすらも声にままならない。
彼の言葉に答えられずにいると、暫くして今度は落ち着いた声が耳に届いた。
「……ごめん。辛いのは唯なのに、こんな風に責め立てるのは間違いだよな。」
「……。」
「……本当に、ごめん…………。」
私を強く抱き寄せる、その身体は微かに震えている。
同じように抱擁で応えることでしか、今の気持ちは伝えられないような気がした。
そして朝まで、いっちゃんは、ずっと抱きしめていてくれた。
陥った孤独から、
私を救い出してくれるように ――――
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