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翌日、練習の合間を縫って時間を作ってくれたいっちゃんと、リサさんの病院を訪れた。
僅か半月で大きく変わってしまった状況。
今できることは、その結果を真摯に受け入れることだけ。
まずは私だけ先にリサさんの待つ個室へと入り、いつも通りの簡単な挨拶だけ済ませると、すぐに本題へ入る空気へと変わった。
彼女の顔から笑みが消える。
それだけで、結果はほとんど分かったようなものだ。
「結果から単刀直入に言うと………前に、ここで言ったとおりの結果が出たの。」
「……。」
「局所性ジストニア。演奏家なら誰もが発症する可能性を持っている病気なの。」
急に指が動かなくなったあの日から、どこかで覚悟をしていた。
毎晩眠れなくなるほどの不安に陥っていたと共に、これからの自分のことについても考えていた。
「……これから、もっと悪化する可能性はありますか?」
「それは分からないけれども、試してみる価値のある治療法は幾つかある。
リハビリを続けて、病気と戦いながらも活躍している人は沢山いる。
だから、あなたが頑張りたいというのなら……力になりたいと思う。」
私に、ピアノを弾くことを諦める選択肢はなかった。
どんな形であれ続けていきたいと願っている。
その気持ちだけは折れずに胸の中にある。
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