【16】 sudden point

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. いっちゃんの言葉を素直に嬉しいと思える反面、行き場のない思いも芽生える。 それは「失っていない」からこそ言える理想論であって、私の気持ちは私にしかわからない。 分かってもらおうなんて思っていない。 こんな苦しみを分かち合って、同じように苦しむ彼の姿は見たくない。 それなら、いっそのこと……。 「いっちゃん……。」 「ん?」 「私ね……ここ最近、ずっと考えていたことがあったの。」 「何を考えていたの?」 ゆっくりと歩きながら話を進める。 眠れない夜を過ごしながら、毎晩のように考えていたこと。 その考えは日を追うごとに、はっきりとした結論へと変わった。 「もし本当にジストニアを患っているのなら、今までと同じようにピアノを弾き続けることは難しいと思う。だから……」 「だから?」 「私が……この街にいる理由、もうないの。」 雅さんの夢を追いかけて、この街でピアノをしたくて毎日ここで生きてきた。 でも……今までみたいに弾けないのなら、私の夢物語はそこで終わりだ。 「私……日本に、帰ろうと思う。」 .
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