【16】 sudden point

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. 本当は誰かに甘えたい。 全てを捨てて、何事もなかったかのように最初から始めたい。 ずっと傍に居てほしいと言ってくれた彼の傍で、彼の幸せを支えることができれば、それは私にとって間違いなく平穏で幸せな日々だと確信している。 けれども、私には選ぶことができない。 弾くことを諦め、この街で暮らしていくことを。 「それに私、いつも与えてもらうばかりで、いっちゃんに甘えてばかりだった。」 「……そんなことないよ。」 「ううん……。いっちゃんの優しさに……当たり前のように注いでくれる愛情に、甘えきっていたの。 居心地が、本当に良かったから……。」 そして、気づいてしまった。 彼は私にとって、家族のような存在だったことを。 付き合っていく上でこういう関係もあることを初めて知った。 でも、本当は…………。 「俺は……唯の傷を、少しは癒せたのかな?」 「……。」 「忘れられないヤツの代わりに、なれたのかな……。」 「……代わりなんかじゃないよ。いっちゃんは、いっちゃんだよ……。」 口には出さなかったけれど、きっと彼は心のどこかでずっと、そんな想いと戦っていたのだろう。 彼を不安にさせてしまっていたのは、与えられてばかりで与えることができなかった私の落度だ。 .
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