【16】 sudden point

27/31
前へ
/518ページ
次へ
. 「……終わりって、徐々にゆっくり始まるものなんだと思ってた。」 「終わりなんかじゃないよ……。」 「……。」 「私たちが同じ夢を追っていたら、遠く離れていたっていつか必ず巡り会える。そう……信じている。」 彼との関係が終わったわけではない。 彼が大切な人であることは変わらないのだから。 けれども私たちは離れてしまったら、きっと恋人には戻れない。 友達と呼ぶには近すぎて、恋人と呼ぶには温かすぎた。 「……旅行、連れて行ってあげられなくて御免な。」 「……私こそ……ごめんなさい。勝手にひとりで、決めてしまって。」 「唯の単独行動の癖は、昔から見ていたおかげで随分と免疫がついたよ。」 「……。」 「危なっかしくて放っておけないのに……自分の意見は絶対に曲げなくて、頑固で……。」 家族や、颯や百香以外で、こんなにも私のことを分かってくれる人は初めてだった。 私は、いっちゃんだから一緒に夢を追いかけたいと思った。 彼に出会わなけば、私の心はまだ、あの8年前の冬から何も変わらずにいた。 本当に心から感謝しているのに、今ここで告げる言葉は全て、彼を宥める気休めにしかならないような気がして、何も言えなかった。 .
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4103人が本棚に入れています
本棚に追加