【16】 sudden point

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. それから数日経って、私は帰国する準備を始めていた。 これから先のことは、まだ何も考えていない。 慶子さんに、治療とリハビリを行うのに勧められた病院が札幌にあるので、落ち着いたらまずそこに行くつもりだ。 「ねえ、いっちゃん。この帽子ちょうだい?」 いっちゃんと一緒に荷造りをしながら、部屋の片づけをしている。 私が手にしているのは、いっちゃんが大学時代から愛用していたニット帽だ。 「そんな使い古しでいいの?」 「うん。これがいい……いっちゃんのトレンドマークだから。」 この帽子を見ると、私はいっちゃんを思い出す。 その思い出は、どれもキラキラ輝いていて温かいものばかりだ。 「……いいよ、持っていきな。」 そう言って、彼はニット帽を手に取って、私の頭にかぶせた。 満面の笑みで。 「それにしても、来週経つなんて……急すぎるよ。もっとゆっくりで良いんじゃないの?」 「うん。そうなんだけどね……。」 帰国を決めた日、すぐに成田行きの飛行機を予約した。 ちょうど2週間後の出発チケットだ。 そして、その日は2日後にまで迫っていた。 帰国を急いだのには理由がある。 ひとつは、今ちょうど父が実家にいて、暫くは一緒に居られる時間が作れると思ったから。 そして、もうひとつは………。 .
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