【16】 sudden point

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. 「私ね……昔、約束をしたんだ。」 「約束?」 「今思えば、夢物語みたいな口約束だった……。」 金環食が近づいてきている。 約束を交わした頃は、9年も先の未来を遠くに感じていたのに、もう手の届くところまで来てしまっている。 「でも私は……その約束を、1日も忘れることができなかったの。」 「……。」 「……本当は、早く忘れてしまって楽になりたかった。」 たったひとつの約束が、この9年間ずっと心を蝕んできた。 忘れようとすればするほど、鮮明に蘇る記憶。 そんな日々を繰り返し、いつからか忘れることを諦め、思い出を心の奥にしまい込んでしまった。 久しぶりに開けた思い出の鍵は、色褪せることなく過去を手繰り寄せる。 すると、いっちゃんが黙ったままの口を漸く開いた。 「出会った頃、唯は……いつもそんな顔、していたよね。」 「……そんな顔って、どんな顔?」 「どこか遠くを見ているんだ。俺なんか到底届かないような、ずっと遠くのものをいつも見ていた。 だから余計に……届きたいって思った。 簡単に手に入れられるものなら、こんなにも愛おしくならなかった。」 .
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