【16】 sudden point

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. いっちゃんの手が、私の手に重なる。 こんな風に彼に触れるのは最後だ。 最後だから……。 不器用なりに、想いを言葉に代えないといけないと思った。 ひとつの恋を、また後悔の色に染めてしまわないように。 「……今の私があるのは、いっちゃんのお陰だって思ってる。 綺麗事とかじゃなくて、傍にいてくれた人がいっちゃんだったから、本当に救われたの。 今更、信じてもらえないかもしれないけれど……それだけは、知っていて欲しかった。」 「……信じるよ。唯は、そんなくだらない嘘は吐かないから。」 「あと……プロポーズの言葉も嬉しかった。」 雅さんの墓前で、いっちゃんが不意に呟いたプロポーズの言葉。 あの時は驚きで頭が真っ白になったけれども、彼の誠実な想いが伝わってきて、本当に嬉しかった。 彼と出会い恋をして、今日まで重ねてきた数々の思い出は、どれも私には贅沢すぎる幸せな時間だった。 涙よりも笑顔で溢れている数年間の思い出の傍らには、いつも彼がいてくれた。 「一緒にいてくれて、本当にありがとう……。」 そして、ひとつの物語が終わりを告げる。 優しくて温かくて、少し切ない気持ちだけを、 この場所に残したままで ――― .
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