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2ヶ月ぶりに帰ってきた釧路は、3月でもまだ雪が深く降り積もっていた。
年末に比べて閑散としている平日の昼間の空港。
バスと電車でのんびり家路へと向かう予定だったが、到着ロビーには見慣れた姿があった。
何故か仁王立ちをしながら、鋭い目でこっちを見つめている。
そして開口一番には意味不明な言葉が飛び出してきた。
「……おみやげ、コアラ連れて帰ってきたか?」
「は? どうしてコアラ……?」
「だって、オーストラリアって言ったらコアラだろ。お前、そんなことも知らないで2年間も住んでいたのかよ。」
「……。」
突っ込みどころ満載の状況から始まった、颯との会話。
私の近況を知って、少しでも元気づけようとわざと馬鹿に徹しているのか、それとも本気で馬鹿なのか、それを確かめる術はない。
「今日、仕事どうしたの?」
「ん? 唯が帰ってくるって言ったら、親父が迎えに行って来いって。」
「そうなんだ。」
颯は高校を卒業してから地元でバイトをしながら、実家の手伝いをずっとしている。
若い担い手が札幌や東京へ流れて行ってしまう中で、何だかんだで重宝されている存在だ。
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