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「それにしても、思ったより元気そうで安心したわ。」
「そうかな?」
「唯のことだから、またひとりで抱え込んで落ち込んでいるんじゃないかって。」
今、百香と夕飯を食べに、市内のカジュアルダイニングに来ている。
前に座る彼女の図星な言葉を聞きながら、私は笑顔で誤魔化す。
勿論、彼女がそのことに気付かないはずもなく、小さく溜息をついた。
「……暫く、こっちにいるの?」
「2週間くらいからかな。今月中には札幌の病院でリハビリ始まるから、そっちに移る予定。」
本当はもっとゆっくりしたかったのだけど、通院の関係もあって、2週間後には札幌へ行くことになっていた。
向こうで通院しながら経過を見ていく予定だ。
ありがたいことに、父が借りているマンションもあるので住むところにも困らない。
「札幌ねぇ。ま、オーストラリアよりは近いし、すぐに会いに行ける距離で良かった。」
「……。」
「でさ、コアラは?コアラグッズ、お土産で買ってきてくれた?」
「……。」
颯と百香は、本当に似た者同士だと思う。
早くくっついてしまえばいいのに、と心底思う。
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