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いっちゃんのことも、病気のことも、電話で一晩中話をしたから、今ここで大きな話題にはならなかった。
それよりも私を気遣ってか、全く関係のない世間話とか、最近あった面白い話とか、少しでも笑顔になれるように徹してくれた。
百香にも颯にも、気を遣わせて申し訳ないと思いつつ、その優しさに救われた。
そして1時間程すると、遅れてきた颯が店へとやってきた。
「悪い、遅くなった。」
「いいって。別に呼んでないし。」
「はぁ!?この場で俺がいなかったら、肉のないビーフシチューと同じだろうが。」
昔から変わらないふたりのやりとりに、思わず頬が緩んでしまう。
周りに囃し立てられて、いい感じになっていると聞いていたけれど、この様子を見る限りでは、そうでもないような気がした。
「颯、今日はライブハウス行っていたの?」
「そうそう。シフト入っていた奴が、風邪で来られなくなってさ。それで急遽呼び出し。」
「そうなんだ……お疲れさま。」
昔から入り浸っていたライブハウスで、颯は時々バイトをしている。
今は、頼まれたら手伝いに行く程度みたいだけれども。
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