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「……やっぱり颯は、唯の前だと違うよね。」
「え、何が?」
明日も朝が早い颯は先に帰り、百香とふたりで帰っているときのこと。
最初は、彼女が何を言いたいのか分からなかった。
「唯にはさ、ちょっと颯といい感じかもしれないなんて言っていたけど……。それは、他の女の子よりも私のほうが近くにいるからそう感じていただけで、実際はそうじゃなかったのかもしれない。」
私が思っていた以上に本気だった、颯への気持ちが垣間見える。
彼女の気持ちを知ったのは高校時代のこと。
「……百香、ずっと颯のこと………?」
「ずっとじゃないよ。昔に1回振られたし、他の人と付き合った時期もあった。」
「……。」
「でもね、私にとってアイツは……誰よりも大きな存在だった。
大きすぎて、もう……どうしようもなかった。」
綺麗で性格も明るい彼女を、好きになる人はきっと沢山いるはずなのに。
普段はあまり見ることない黙り込んだ横顔は、私の胸を強く締め付けた。
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