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「ねえ……唯。」
「ん?」
「私さ、今まで何だかんだ理由つけて、自分の気持ちをちゃんと向き合おうとしなかったの。」
颯への気持ちを断ち切ろうと、何度も他の人と付き合った。
それでも結局は上手くいかずに長続きしなくて、苦しんでいる彼女の声を何度も電話越しに聞いた。
「いつまでも報われない恋愛しているほど、もう若くもないしさ。自分に合った人を探そうって。
でもね……頭ではそう思っていても、心が無理なんだ。」
百香の気持ちが痛いほど伝わってくるのは、きっと私も……そうだから。
誰にも言わずに、自分でも気づかないように、完全に閉ざしてしまった想い。
忘れようとしても忘れられない、心の古傷。
「きっと私は……ずっとこれからも、颯のことが好きなんだよ。誰よりもずっと。」
「うん……。」
「もう、ちゃんとするからさ。だから……応援してくれる?」
「……当たり前だよ! 応援するに決まってるじゃん!!」
ずっと燻っていた百香の想いが、ここにきて前を進みだす。
そんな彼女の姿を、傍でこうして見られることが、本当に嬉しい。
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