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春が来る度思い出す。
風に吹かれ、ひらひらと舞い散る桜。花びらの嵐の中を歩く二年前のあたしと、
「時間、間に合うかなー」
駅で出会った同じ新入生の子。
「大丈夫大丈夫、あと20分あるもん」
「マジ?よかったー、俺時計も携帯も忘れてさ」
バカだー、と笑って彼を見れば、バチッと眼鏡の奥の目と視線がぶつかった。同じ目線の高さ。
ドキッとした。
その時、ふわりと彼の頭に花びらが舞い降りた。
「あ、花びら」
「え?どこ?」
彼は慌てて頭を掻き回す。元々寝癖で跳ねたまんまの頭だからよかったけど。
「あ、取れた取れた。てか髪、跳ねてるよ」
あぁ、と表情を緩ませた。春の陽気みたいに柔らかい笑顔。いちいちあたしの心臓は反応する。
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