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高校生活三年目の春、窓の外の桜を見ながら、そんなことを思い出した。 夕闇迫るこの時間帯、進路指導の面談で残っていたあたしは、一人廊下を歩いている。 教室に置き忘れた体操服を取りに戻るためだ。 ぼんやりと歩いていると、教室から声が聞こえてきた。男子と女子の声。 なんとなく、忍び足になる。 「もうダメだってー」 「えーどうしても?」 「どうしても」 聞き覚えのある声。誰だっけ、誰だっけ…。 記憶を掘り起こしながらも、教室の扉までもう2m程。何の警戒心も持たずに進み続ける。 そりゃあ、扉開いてんだよ?何かが起きてるとは思わないでしょ。 開いた扉の前にたどり着いて、あたしが中を見たのは、 「ん…」 会話の主の二人の影が、重なった瞬間だった。
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