2936人が本棚に入れています
本棚に追加
教えてもらった通りに、真っ直ぐ廊下を進んで行き、突き当りを右に曲がるとプレートに女子更衣室と男子更衣室と書かれた扉が、それぞれ間隔を空けてあった。
「失礼しまーす…」
控えめにノックした後、沙耶はそろっとドアを開ける。
「!」
ちょうど、沙耶があゆみから借りたスーツと同じデザインのものに着替え終わったらしい中年の女性が、ジロっとこちらを見ていた。
―うっ。
沙耶はその貫禄ある巨体と眼差しに一瞬たじろぐ。
が。
「あら!?もしかして瀧澤さんのお友達かしら?」
怖かった視線は直ぐに和らぎ、中年女性は屈託なく笑った。
「はい!秋元沙耶と言います!よろしくお願いします!」
言いながら、沙耶は勢い良く頭を下げる。
「はいはい、話は聞いてるわよ。急にで悪いけど、今日は宜しくね!私の名前は今井よ。」
今井はそう言って、胸に着けたバッジを見せてくれる。
「あ、よろしくお願いします」
沙耶は上げかけた頭を、再びぺこりと下げた。
「瀧澤さんから、働き者とは聞いてたけど、こんなに早く来るとは感心だわ。」
―なんだ、怖い人じゃなかったんだ。。
今井の温かい言葉に、沙耶はほっと胸を撫で下ろし、パーティーが始まる時刻迄に、一通りの仕事の流れを教わることに成功した。
最初のコメントを投稿しよう!