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「どいてください。」
「!?」
沙耶は、そんな坂月をかわして、警備員が立っているゲートへと向かう。
「なんだ?君は!?」
二人の警備員がびしょぬれの沙耶を見て、露骨に嫌な顔をし、通せんぼしようとする。
が。
「いや、新しい社長の秘書ですから!」
沙耶の後を追ってきた坂月の言葉に、驚きの色が広がった。
「ええ!?」
「しっ、失礼しました!!」
途端に、態度を翻らせた中年の警備員二人は敬礼までして、沙耶を通らせるが、沙耶の視界にはそんなもの映っては居ない。
無反応でずかずかと、円柱型になっている自動ドアを抜ける。
前に来た時とは打って変わって、中には社員が多く居て、突然の沙耶の登場に水を打ったようになった。
警備員らしき人間も、受付嬢も、見る人全てが、場違いなこの女にぎょっとするも。
直ぐ後ろに付いてきている坂月に気付くと、立ち止まってそれぞれ礼をする。
誰もが、謎のびしょ濡れ女を不審に思ったが、坂月の手前、何も言うことができない。
全員が固唾を呑んで見守る中、二人はエレベーターホールへと―一人は床に転々と水滴を落としながら―消えた。
途端にあちこちで、あの女は何なんだという問題が提起され、様々な憶測が飛び交うこととなった。
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