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バァーン!
沙耶は、両手が塞がっていることを良い事に、重たい扉を思い切り蹴り飛ばした。
「ノックくらい、常識だろ?秘書として失格だな。」
途端に、冷ややかな声が聞こえてくる。
「どうも!遅くなって申し訳ありませんでしたっ!!」
机の上に足を投げ出し、書類に目を通していた石垣に、沙耶は喧嘩を売っているようにしか思えない口調で詰め寄った。
「ご注文の品はこれで間違いないでしょうか!?」
叩きつける様にして、広いデスクにパンとパンと―もうそれぞれの名前は覚えていない―、パンの入ったサラダと、珈琲を並べる沙耶。
石垣は、普段掛けていない眼鏡を無言で外し―
「間違いないけど、冷めてるから。コレ以外は要らない。」
「なっ!!?」
珈琲を片手に持つと、あろうことか、それ以外を蹴り落とした。
「時間も大幅にオーバー。最低ランク。」
はーぁ、と大袈裟な溜め息を吐いて、石垣はまた書類の束を手に取った。
「明日はもう少しマシな秘書になってるといいんだけどねぇ。」
あんぐりと口を開けて、床に落ちたパン達を見つめる沙耶に、石垣は追い討ちをかける。
「あ、それ、棄てといて。勿体無かったら食えば?」
馬鹿にしたようにククッと嘲笑って、回転椅子がぐるりと回る。
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