男心と秋の空

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「おっと、こんな時間だ。最初はまだ慣れないかと思いますから、しっかりサポートします。電話も秋元さんが取引先の顔と名前が一致するまでは、私が取り次ぐので、安心してくださいね。あ、その棚にリストは入ってますから時間がある時に目を通して暗記してください。」 白々しい仕草で、坂月は腕時計に目をやって、テーブルの上に開きっぱなしになっていたパソコンを抱えた。 「社員との接触もこれからあると思いますが、時々ですので、それも追々で。社長の秘書はコロコロ代わるので、一同免疫はついていると思いますが、何しろ女性は初めてなのでそれなりに噂になるかもしれません。まぁ気楽に構えていてください。」 「・・・・」 「えっと、何か用があったら内線にかけてきてください。…階はひとつ下になります。…じゃ、私はこれで。」 じとーっとした責めるような沙耶の視線から逃れるように、坂月はそそくさと部屋を出る。 「あ、そうでした!明日の引越し、業者頼んでおきましたので、ご心配なさらず!任せっぱなしでOKです。」 一度出たのに、坂月は数歩戻ってそう叫ぶと、今度は確実に部屋を後にした。
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