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社長就任のパーティーのあった日―つまり沙耶が石垣にワインをぶっかけた日―も、きちんと予定として記入されていた。
が、その近辺から、字体がまたがらりと変わっている。
前から決まっていたような予定の字は変わらないが、付け足されたような文の字が違う。
「皆、字、綺麗だなぁ…」
男の字が汚いと決め付けているわけではないが、秘書は全員男だという事実に、驚きが口を衝いて出てしまう。
沙耶の方がよっぽど汚い気がする。
「で、今日は―、と。」
漸く今日の欄まで辿り着いたかと思えば、何の事はない、栞の紐がちゃんと挟まれていた。
「うぉ、みっちり。」
午前中は比較的空いているかと思いきや、会議、会議、会議と3連チャン。
タイムスケジュールを人差し指でなぞり、細かい指示を確認していく。
「えーと、今は、と。」
一度部屋の時計を確認し、再び手帖に向ける。
時計の針は、既に16時を回っている。
「げ。なんかよくわかんないけど、まる鶴って何だろ。」
15時に丸の中に漢字で鶴と書いてあって、取引、となっている。
「っていうか、大丈夫なのかな?あいつ、いるよね?!」
やばいっと小さく叫んで、沙耶は勢いよく席を立つと、奥の部屋へと向かった。
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