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難しそうな書類は数多くデスクに載っているけれど、きちんと整理されて並べられているのがわかる。
それを視界の隅に捉えながら、沙耶はどうしてこんなことになったんだろう?と今一度自問していた。
―格闘技じみた朝を迎えて、パン買いに走って、雨に打たれて、置いてけぼりって…秘書って言えんのかな。
静かな場所に一人でいるせいか、急に疲れを感じ始める沙耶。
―石垣が一体何を考えているのか分からない。坂月さんも、身辺警護みたいなこと言ってたくせに、これじゃ私意味ないし。
ぷぅ、と無意識に片頬を膨らませ、とりあえずこれからのスケジュールを把握しておくか、と、踵を返した。
―のだが。
「うわ?!」
慣れないヒールが、部屋に敷かれている絨毯に引っかかり、バランスを崩し―
「っとと…」
思わず、すぐ後ろにあったデスクの上に手を着いた。
「あっ…」
まずいと思った時には、遅かった。
順序良く並べられていた書類がずれて、沙耶の手も滑ったが、踏ん張ったせいでくしゃりと歪み、しかも数枚は床に落ちた。
―やばい。。
沙耶の脳裏に、さっき坂月から与えられた忠告が浮かぶ。
―社長は極度の潔癖です。
背筋に冷たいものが走る。
―うっかりでも社長のテリトリーに置かれている物に触れることがないよう、細心の注意を払ってください。
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