記憶が引き連れてくる香り

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この笑みは、本日三回目。 沙耶は恨みがましい目つきで坂月を見た。 「えっ!?なっ、なんですか??」 当然、坂月の表情には、動揺の色が広がる。 「…そうやって、、守衛1と2にも馬鹿にされました。」 「守衛1と2って…それに別に馬鹿にしたつもりは…」 首と手をぶんぶん振る坂月を前に、沙耶の頬は膨れていく。 「どーせ、チャリで来る人なんか、ここには居ないんでしょうけど、私から言わせてもらえば、この敷地無駄に広すぎます!」 「あ、やっぱり疲れました?」 「!!!つ、疲れてなんか…」 図星を突かれて、今度は沙耶が動揺する。 「会社に行く時に使っているジャガーなら、目立たないんじゃないですか?それに、今日から新居ですし、あのマンションは、ロータリーも広いですよ。どうですか?運転手に送迎を頼んでみては。」 確かに坂月の案は悪くない。 むしろ助かる。 だが。 「い…いいいぃえっ!!チャリで十分です!」 ここで引き下がると、負けな気がする沙耶。 咄嗟に首を横に振った。 「―そうですか??まぁ、いつでもできるので、寒くなったりしてきたら、また考えてみてください。」 会話がちょうど一区切りついた所で。 執事とメイド達がぞろぞろと見送りのポジションに着き始めた。
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