記憶が引き連れてくる香り

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「ああ…うん。わかった。そう、、、うん。」 なにやら相槌を打っているのを見ると、どうやら、電話の相手は知っている人間のようだ。 ―だからって、、だからって名前もなしにどこの常識外れが電話繋ぐのよ、ばか! 沙耶は唇をきゅっと結んだ。 「行かない。行く必要もない。つーか、あれには今日会ってきた。呼び出し受けて、、けどそんな話一切なかった。それどころかお前との事に口出ししてきた。」 相手がわかったことで、石垣の警戒心は取れたようだが、眉間の皺はなくならない。 沙耶はさっきの叔父の話なのだと頭の中で解釈したが、これ以上聞いてはいけない様な気がして、その場から離れようとした。 が。 ―ん? 電話している石垣が、何の躊躇いもなく、沙耶の手首を掴んだのだ。 「ちょっ…」 何事かと石垣の顔を見るが、彼は視線を落としたまま、会話に集中している。 ―なんだ、この手。 さっきは触るなとか言っておきながら。 ―しかも私は嫌だっ!はーなーせー!!! 風呂上がりのせいなのか、伝わる石垣の体温が、少し熱い。 沙耶は無言でブンブン腕を振った。 しかし石垣は放さないし、かといって視線も交わっていない。
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