記憶が引き連れてくる香り

48/61
前へ
/430ページ
次へ
======================== 「すげぇ…」 自転車から降りて、沙耶の口から零れ落ちた驚き。 15階建てのデザイナーズマンションを、ぽかんと見上げた。 さっきから何度も周辺をぐるぐると回っていたが、まさかこれだったとは。 「自転車置き場ってどこだよ…」 沙耶は頭を振り振り、とりあえずそこらへんに停めて、中へ入ろうとした。 24時間セキュリティーだというこのマンションには、管理人が常在しているらしいので、訊ねてみようと考えたのだ。 だが。 「地下にありますけど、玄関に置いておいても良いと思いますよ。」 第三者の介入により、問題は速攻で片付いた。 「坂月、さん…なんでここに…」 「やぁっと来たか!姉ちゃん、マジここすげぇよ!」 神出鬼没の坂月が、駿と一緒にエントランスから出てきた所だった。 「おかえりなさい。時間外のお仕事お疲れ様でした。」 狼狽える沙耶に坂月が飄々と頭を下げた。
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2917人が本棚に入れています
本棚に追加