記憶が引き連れてくる香り

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「ええと…まず、、叔父さんの所から帰ったあいつの様子がおかしいんだけど、どうしたのかってことと…、会社に電話をかけてきた失礼な男―嘉納って言ったかな。。そいつは何者なのかってことと、あいつのお父さんの事故のことと、今日のスケジュールが空っぽなのはなんかあるのかってこと…」 「―ストップ。」 「あ、今のでとりあえず全部です。」 遮るように坂月が止めたが、沙耶は全部言い切ったことに満足する。 「…まぁ、私が話そうとしていたことと、それなりに一致するので、一緒に話しましょう。私がお訊きしたかったのは今日行った石垣の叔父―つまり佐伯家で何を訊かれたか、という事なんですが。。。」 言いながら坂月は沙耶が手にしていた紙袋に視線を落とした。 「それ、返してもらってもいいですか?」 「は!?え、嫌です!」 折角今日一日肌身離さず持っていた形見を、見る前にどうして坂月にリバースしなければならないのか。 沙耶は頑なに拒否して、紙袋をぎゅっと胸に抱き締めた。 「―きちんと一日持っていてくださったようで…ありがとうございました。本当に感謝しています。実は、、謝らなければならないことがあります。」 沙耶の様子を見ながら、坂月は真剣な顔をして頭を下げた。 「この通りです。許してください。」
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