記憶が引き連れてくる香り

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「え、なんですか、え?」 意味のわからない坂月の行動に沙耶は狼狽える。 「中、開けてみましたか?」 少しだけ頭を上げた坂月が、上目遣いに訊ねたので、沙耶は首を横に振った。 そして、はっとして紙袋の中に手を突っ込んで取り出し、がさがさと箱の包装を開けていく。 「これ…」 出てきたのは―。 ICレコーダーというモノだろうか。 小さな機械が箱の中に固定され、沙耶を見つめていた。 「申し訳ありません。本当は最初に打ち明けるつもりだったのですが、社長にバレますと色々と面倒なので、内密にする為、秋元さんには悪いが咄嗟に嘘を吐きました。」 坂月は薄い唇をきゅっと結んで、項垂れる。 「期待させて本当に申し訳ありませんでした。秋元さんの服は修理中ですが、縫い目を目立たなくさせる為に、もう少し時間が掛かるそうです。」 箱の中を見つめたままで、顔を上げない沙耶に、坂月が益々不安げな表情になる。 「秋元さん…?そうですよね、、、折角のお父様との思い出をこんな風に利用されたら誰だって怒りますよね…。取り返しのつかないことを…本当にどう謝っていいのやら…」 段々としどろもどろになる坂月。 「もしあれなら、、そう!一発殴ってください、それで少しでも気分が晴れるなら―」 ありがちな坂月の提案に沙耶は顔をぱっと上げ。 ガンっ 「いっ!!」 瞬時にその頭に鉄拳を落とした。
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