記憶が引き連れてくる香り

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「…うーん、、一体何からお話したら良いか…」 数分後、イヤホンを耳から外した坂月が悩ましげに溜め息を吐く。 「順を追って説明しないと、ごちゃごちゃになってしまいそうで…」 上手く話せるかな、と坂月は一人言ちた。 「まず、、他と関連性がない所から行きますか。…嘉納という男の正体ですが、下の名前を孝一と仰います。社長の幼馴染みで、日本で一、二を争う財閥です。ちなみに一と二は嘉納と志井名ですが、志井名の孫でもあって、嘉納の息子でもあるという非常に微妙な立場でいらっしゃいます。ちょっと前にスキャンダルもありましたし、中々の苦労人です。」 「よくわかんないですけど…すっごいふてぶてしくて何回訊ねても名前を言わない失礼な人でしたよ?」 沙耶の訴えに坂月は不思議そうな顔をする。 「?そうでしたか?孝一様は穏やかで、決してそんな方では―もしかしたら、新しい秘書だと知って警戒してわざとそんな態度をとられたのかもしれませんね…」 コロコロ変わる秘書に対して、嘉納は良い印象を抱いていないのだと言う。 「やはり秘書とは信頼関係が何より大事ですので。社長のように何度も代えていればそれだけ危険も大きい。それを察してのことだと思います。」 「ええぇ?あいつがぁ?あんな態度の奴がぁ?石垣と大体同レベルだと思いましたけど。」 かなり印象が悪かった為、沙耶の口から自然と出た格付けに坂月が苦笑した。 「少なくとも、社長とは比べ物にならない程出来たお方です。少し年上ですしね。」 坂月にとっては、かなり高評価の人間らしい。
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