記憶が引き連れてくる香り

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「お母さんも亡くなってるんですか?!」 「もって…まだ巌様は亡くなっておりません。それに、大分前ですよ。それこそ社長が小学校入るか入らないか位の頃じゃないですか。」 義理の母親だって居るし、と坂月がけろりと言い放つのを見て。 「さ~か~つ~き~さ~ん???あんたって人はっ!本当にっ!情報不足過ぎるのよ!業務連絡くらいちゃんとしなさいよ!仕事する上でホウレンソウは基本でしょう!?」 沙耶の怒りのパワーが両手にわきわきと行き渡り、坂月に詰め寄ろうと構えた。 「いや、ダメですって!社長に1m以内は近寄ってはいけないと言われているじゃないですかっ!」 「げっ、聴いたの!?本当に抜け目のない人ですね!!自分ばっかり!」 その肩を掴んでガクガクと揺すれば、坂月が許してくださいと懇願し始める。 「ちょっっ、、まっ、、、」 その瞬間。 「おあっ」 沙耶がバランスを崩し、坂月の胸に飛び込んだ格好になる。 「っとに…貴女って人は…」 直ぐに呆れたような声が振ってきて。 「わぁ!?すみませんっ、いっ!」 慌てて飛び退こうとしたが、髪の毛が坂月のスーツのボタンに絡まり、その痛みに沙耶は顔をしかめる。
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