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セッティングを済ませ、会議が始まる。
沙耶は会議室の外で待とうと考えていたのだが、電話が掛かってくるかもしれない、という石垣の指示の下、一人寂しく秘書室のデスクに向かっていた。
―一体誰からの電話かしら。
不思議に思いながら、沙耶は既に暗記した業者のリストや、重要な取引先の顔写真のファイルを眺める。
先程自分のオフィスに戻っていった坂月が、沙耶の代わりに行ってくれていた電話の取次ぎを受け持つ迄に2週間とかからなかった。
―記憶力には自信があるんだけどなぁ。
石垣が名前を言わなかったことに、ひっかかりを感じる。
「あ、しまった。講演会の資料をまとめておかないと。あっ、その前に取材か…」
空いた時間を有効活用しようと、立ち上がった瞬間。
ツーツーツー
内線が鳴った。
「はい!秋元です。」
《受付石田です。嘉納様がいらっしゃっております。社長室の方へ通すよう指示を託っておりますので、対応の方お願い致します。》
―嘉納??
沙耶の頭の中が真っ白になる。
《…?大丈夫ですか?》
「へ!?あ、はい!」
心配そうな受付に、沙耶はかろうじて返事をして、とりあえず受話器を置いた。
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