茜色の後の雨と、霞む空

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ぽつん、とひとり残った部屋は思いの外静かで。 パソコンを畳む音がやけに大きく響く。 「あーあ」 坂月はソファに深く座りこんで天井を見上げた。 一人の時に吐く溜め息の回数が、ここ最近増えた。 自覚症状は、ある。 「偶然、か。」 吐いた溜め息は、自分の中から力を奪って空気に吸い取られてしまうのに。 そんなこと、わかっているのに。 「なんで、見つかっちゃったんだ…」 思わずにはいられない。 考えずにはいられない。 どんなに目を凝らしても、天井に答えなんて書いていないのに。 「どうせなら―」 そして、願う。 どうせなら。 いっそのこと。 「…早く奪ってくれ。」 自分の気持ちの抑えが効かなくなる前に。 連れ去ってくれ。 お願いだから。 彼女が―。 自分に幻滅する前に。
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