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自分だったら、に置き換えてみると、どうもピンとこない。
所持金がなければ、こんなところに来たってどうしようもないし、ウィンドウショッピングは大の苦手なのだ。
「―そうしましたら、次は3、40代男性をターゲットにしたフロアにご案内致します。」
「…はぁ。」
ちゃきちゃきと歩いていく男の後を、げんなりした顔で付いていこうとする沙耶を、隣に立っていた石垣が横目で見る。
「お前さぁ、顔に出しすぎ。」
「だって、しょうがないじゃない、つまんないんだから!」
囁かれたお咎めに、むっとした沙耶は小声で言い返す。
小さいながらも、勢いで感嘆符も付ける。
「同じ20代の女達は皆目を輝かせてるって言うのに…枯れてんなぁ。」
「皆が皆そうなわけないでしょうよ!一緒にしないで。」
「じゃ、何だったら楽しい訳?」
石垣の問いに即答した。
「そりゃ勿論。安いスーパー!!!!」
―しまった。
熱が入る余り、ボリュームコントロールを間違えた。
「安い、、スーパー??」
大声で叫んだ沙耶の前でピタリと足を止め、振り返る案内の男。
ばーか、と口パクで意地悪く笑う石垣。
「ええ、ございますよ。後ほどご案内致しますから、もうしばらく、お待ちいただけますか。」
真顔で返されて、沙耶は顔から火が出る程恥ずかしかった。
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