茜色の後の雨と、霞む空

40/42
前へ
/430ページ
次へ
式は淡々と進行していき、イベントが始まると、沙耶は知らない芸能人も特設ステージ上に登場する。 観客がわぁ、と声を上げている所を見ると、中々人気があるらしい。 サッカー選手達も参加したりして、小さい子たちも興奮を隠せない様子だ。 石垣はというと、ステージの脇で、関係者と難しい顔をしてなにやら話し込んでいる。 見ている客のことを一応意識しているのか、時折作り笑いをして、私もステージを見てますよアピールをする。 ―バレバレだっつーの。 沙耶は、最初は客達に混じって正面から見ていたのだが、今はステージ裏で、自分のボスを観察していた。 いつものごとく、心の中で毒づきながら。 ―直ぐ帰るって言ったのに。 ポケットから携帯を取り出し、時間を確認すると、結構良い時間になっていた。 陽も沈みかけている。 ―そもそも、最初はこっちに出る予定じゃなかった筈なのに。 沙耶は首を傾げる。 組み込まれてなかった予定が急遽入った。 もとい、沙耶は把握していなかったと言うべきか。 ―誰かに頼まれたのかなぁ。 そこまで考えた所で、ふと、嫌な予感が過ぎった。 咄嗟に周囲に目を走らせる。
/430ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2925人が本棚に入れています
本棚に追加