思い出は思い出のままで

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======================== 「姉ちゃんさ…秘書かと思ってたけど、ボディガードの間違いだったの?」 「いてて…ってぇー。」 高校へ行く前の駿が、呆れたような顔で、消毒液を浸した綿を傷口にぽんぽんと置いていく。 「一応姉ちゃんだって女なんだからさ、そこらへんはきちんとしてもらいなよ。嫁入り前なのに顔まで傷つけちゃってさ。」 「一応って何よ、一応って。」 痛みに顔を顰めながら、沙耶は口を尖らせた。 昨日。 救急車で運ばれた後、沙耶は石垣家御用達の病院のベットで目を覚ました。 動こうとした途端、走る鈍い痛みに思わず肩を見ると、処置を終えた後だったようで、包帯が肩にぐるぐる巻かれていた。 詳しく検査する為にも、入院を勧められたが、頑なに断って、一人で勝手に家に帰ってきてしまった。 翌朝、やはり、というべきか。 熱を持った肩に、せめて湿布位もらってくればよかった、と反省を噛み締めた。 「はい、終わり。つーかそんなんで行くつもりなの?」 負傷した肩はジャケットに通すことができず、反対側に引っ掛ける形でスーツを着た沙耶は、駿の問いに「当たり前」と答えた。 そこへ、インターホンが来客を告げる。
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