思い出は思い出のままで

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昨晩-。 沙耶が病室で目を覚ますと、あの後付き添ってくれたらしい石垣が、直ぐ傍の椅子に座り、うつらうつらしていたので、驚いた。 音を立てたり、声を掛けたりするのもなんとなくはばかられ、腕組みをして目を閉じている彼を息を呑んで見つめた。 そうして、遠い記憶に再び思いを馳せた。 そうこうしている内、様子を見に来た医者がたてた軽い足音で、石垣は直ぐに目を覚まし、慌てて目を逸らした沙耶に気付く。 同時に医者も沙耶が目を覚ました事を知り、診断結果を沙耶に細かく説明してくれた。 沙耶がばっくれたのは、その数分後。 医者の入院の進めと検査を、頑なに断った沙耶に呆れた石垣が、説得を試みて、言い合いになり、頭を冷やしてくる、と、途中席を外した。 その間ひとりきりになった沙耶は、しめしめと一人病院を抜け出してきたのだ。 幸い駅近だった為、助かった。 だが、石垣が腹を立てているに違いないことはわかっていた。 でも、仕事で会うんだし、大丈夫かななんて楽観的にも考えていた。 「心配してらっしゃるんですよ。その前もその後も、血相変えて私の所に連絡してきたりして、大変だったんですから。」 坂月は目をくるりと回して、肩を落とす。 「でも、、、申し訳ありません。…頼んだ私のせいですね。貴女にそんな大きな怪我をさせてしまうなんて…」 「いえ、そんな…」 「しかも顔にまで傷を…いやもう、、本当になんて謝ったら良いのか…」 「いや…」 「-いいんですって!姉ちゃんのセールスポイントは腕っ節の強さと身体の丈夫さ位しかないんですから!」 恐縮しきる坂月の手前、沙耶が謙遜になっていると、いつの間にか靴を履いた駿が、にこにこと会話に割って入ってくる。
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