堕ちる所まで堕ちてやる

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「今日は石垣財閥の催事があるからか。人手が足りないって言ってたから。」 「…ええ、たぶん…そうです。。。」 友人から頼まれたことを大っぴらにしていいのかどうかわからなかった為、曖昧に言葉を濁して、沙耶は守衛に場所を訊こうと立ち止まる。 「それじゃ、頑張ってください。」 坂月もそれに気付いたのか、帽子を脱いで沙耶に挨拶して立ち去った。 ―あ、栗色。 帽子の下から現れた髪に、僅かに反応する。 ―いやいや、いっぱいいるし。 そんな甘い記憶を振り払うようにして、沙耶は怪訝な顔をしている守衛に向き直った。 「こんにちは。あの、秋元沙耶と言います。今日は瀧澤あゆみの代わりに一日だけお世話になります。」 皆まで言わずとも、守衛に話は通っているとあゆみからは聞いている。案の上、社員証を見せるだけで、守衛は頷く。 「その通路を真っ直ぐ行って、突き当りを左に曲がるとドアがあって、中に入ると従業員用のエレベーターがある。3階の大宴会場が今日の現場だよ。更衣室は突き当りを右にいけばあるから。」 「ありがとうございます。」 沙耶は、守衛の言葉を頭の中で反芻しながら頭を下げた。 「更衣室に行けば、誰かいると思うから、そしたら仕事を教えてもらえばいい。」 付け足された情報に、何て適当なんだと唇を噛んだ。 ―誰かって、誰だよ!
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