§*+。第1話。+*§

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季節はリーラット、 大陸では春を意味する季節だ。 この時期の気候は暖かく、 毎年桃色の花を咲かせるサフィネの木々が満開を迎える頃である。 目映い白い光に照らされた大地。 ウォーネスト帝国の東部に建つ 帝国城は、草木を揺らす心地良いそよ風に優しく包まれていた。 時刻は十一時過ぎ。 晴れ渡る広い青空にはふわふわの綿飴をちぎったかのような白い雲が穏やかに浮かんでいる。 帝国城のとある部屋、紅色の扉を開き中へと入る一人の女性。スラリとした背格好に金色の長い髪を揺らす爽やかな水色ドレスを着た女性はアクアマリンの様な水色の瞳に映る光景を見て立ち止まる。 皇帝室は部屋の北側に入口の紅い扉、正面にガラスの長テーブルと向かい合って黒い長ソファーが置かれ、南側には水色のカーテンを両脇に束ねた大きな窓があり部屋に射し込む太陽の光が下に敷かれた紺色の絨毯を引き立たせる。 暖かな陽気とそよ風に眠ってしまったのだろうか。皇帝机に組み伏せた紫の上着を着た腕に横顔を置いて眠る少し乱れた桃色の前髪。 彼女は自称桃色の髪の乙女(仮) 名前はカレン=J=ローレンツ。 その光景を目にして優しく眺めていた金色の長い髪に水色のドレスを着た女性、目鼻立ちの整った顔は何処か呆れているように苦笑を浮かべて机で腕に顔を伏せている桃色の髪の乙女(仮)に近寄った。
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