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「お食事はいかがなされますか?」
バレットの問い掛けにフレイヤが応える。
「アタシは城下で食べるから心配いらないわよ? お昼はカレンも一緒だから、バレットは他の部隊長にその事をちゃんと伝えて兵士達には今日は自分で食事に行ってもらうようにしなさい」
「承知しました。部隊長に伝えておきます。それとフレイヤ様……料理長が欠席されてしまったので明日までの材料費の予算を出して見たんですが確認していただけませんか?」
「わかった、見せて。
あ、カレン先に向かっててこれが終わったらアタシも後で行くから
ジンさんのバーで待ち合わせ」
フレイヤはバレットが胸ポケットから取り出した封筒を受け取る。
「じゃあ私、先に行ってるね。」
カレンは皇帝室の壁にある縦長の鏡の前で服装を整えると桃色の髪を白い手でさっと直し、扉を出て城の廊下を歩いて行った。
時刻は十二時過ぎ。
帝都クロウディアの街は、お昼の食事をする人々で賑わっていた。
大通りを歩くと皇帝であるカレンには余りに目立ってしまうのでいつも歩くのは大通りを一本外れた路地裏、帝都ではカレンの顔を知る者が多いが何分大きな帝国である為に帝都内くらいしかカレンの顔を知る者は少ない。
隠れて歩く必要は無いのだがその手で掴み取った自由でも、彼女が頂点に立つまでに自分が生き残る為とは言え犠牲にして来た奴.隷達を思うと自分を英雄視されるのがカレンは嫌だった。
救えなかった命を思う度、彼女の十字架は重くなるばかり。
この路地裏を歩くといつもそんな事を考えていた。
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