転機

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夏川大学病院。俺、秋川修哉はここで心臓外科医として働いている。 今まで執刀した患者は軽く千人を超えマスコミからは「神の手」などと呼ばれていた。注目されて周りからはうらやましがられるが、俺はあまりこの生活は好きではなかった。 テレビでは夏川大のことを最高の病院と紹介しているが、そんなにいいものではない。 助かる見込みの少ない末期がん患者を別の病院に転院させたり、最悪退院させたりと名前を穢す患者を片っ端から排除していた。他にも夏川大を出た人のみが上に上がるなど所謂ひいきもかなり頻繁に起きていた。 最初は、あまり関わりを他の病棟とは持たなかったため、今の病院の情勢を知らなかった。 そんなある日、俺は内科医で同い年の佐藤瑞穂に出会い様々な話をするようになる。 彼女は、俺より5年ほど早くこの病院に勤務しその性格と口調から「女王」というあだ名がついている。最初の出会いは俺が風邪を引き彼女に診察をしてもらったのが始まりである。散々嫌味を言われた俺は仕返しに何か弱みを握ろうと診察後の彼女の後を追った。 気づかれないように後をつけると小児病棟にたどり着いた。そこで俺は、子供たちを世話する彼女を見つけ、そこでの笑顔に次第に惹きこまれていった。 その日から、俺も手が空けば小児病棟で瑞穂の手助けをするようになった。 最初は向こうもかなり警戒していたが次第に打ち解け俺に今の病院の情勢や何故患者にきつく当たるのかの理由を話してくれた。互いに秘密を打ち明けたことで俺たちは互いにおち、病院での仕事に少しづつやりがいを感じ始めていた時だった。
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