転機

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瑞穂が見学し終えて手術室のドアを通り過ぎていたころ、教授と家族が近くの待合室で話していた。 「先生。夫は大丈夫なんでしょうか?」 「先ほど、見学してましたが。助かる見込みは少なそうです。」 と教授が嘘を言っていると、手術中のランプが消え、修哉が手術室から出てきた。 「先生!!夫は、まさか・・・」と涙ぐみながら家族が詰め寄ると、それに続いて教授も 「秋川君、やはり、体力がもたなかったか・・・」 と残念そうに聞いてきた。 教授の裏の顔を知ってる修哉は内心 (何言ってんだこのくそじじい) と、思っていたがぐっと堪えて少しため息をついた後 「俺を誰だと思ってんですか。看護師、患者さんを病室に運んでくれ」 と言い手招きをすると、手術を終えた患者が運ばれてきた。 家族は喜んでいたが教授は唇をかみしめていた。 教授は、修哉に詰め寄り 「どういうことだ!修哉くん。患者は危険だったんだろう!」 と支離滅裂な怒号を浴びせ始めた。展開を読んでいた修哉は臆さずに 「助かったんだからいいでしょう。それとも、何か悪い事でも?」 と聞き返すと、案の定 「当たり前だ!金のない命なんて助けても・・・!」 と教授があっさりと本音を漏らした。 それを聞き逃さなかった家族から 「それが医者の言うセリフですか!」 と今度は家族から詰め寄られ、たじたじになっていた。 「いや、あれは言葉のあやで・・・。」 教授がしどろもどろになってるとさらに家族が 「金と命を天秤にかけるなんて酷すぎです!こんな人が教授なんて信じられません!」 とさらに怒りをぶつけた。 「ぐぐぐ・・・。くそっ!覚えてろ!修哉!」 と捨て台詞を教授が吐き捨てて逃げるように去って行った。
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