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教授が逃げ去った後、患者の奥さんが
「ありがとうございます!先生!夫を助けってくださって!」
と修哉の手を握りながらお礼を言っていた。
「いえいえ、私だけの手柄じゃありませんよ。ここまで容体を安定させた佐藤先生の手柄でもありますよ。後は旦那様が生きたい思いがあったのも一つの要因です。暫くはリハビリに専念してもらう必要がありますけど、ご家族総出で支えてあげれば早く日常生活に復帰できますよ。」
と謙遜しながらも顔には笑顔があった。
暫くお礼を言った後、奥さんが
「でも、先生。先ほどの人に何か言われたようですが。」
と聞いてきた。
修哉は頭を掻きながら
「実は、「今回の手術を成功させるな。成功させたらどうなるか分かるな」と脅迫されましてね。」
と経緯を話した。経緯を聞いた奥さんは
「え?でも今回の手術は・・・」
と言うと修哉は笑顔で
「ハハハ、心配ありません。手術は成功です。旦那様の容体は安定していますから。」
と答えた。
「先生、もしかして私たちのために命令に背いたんですか?そんなことをすれば・・・」
と奥さんが言うと少し気まずそうな顔で修哉が
「まあ、左遷かクビでしょうね。でも、あなたたちの為に命令違反をしたわけではありませんよ。奴の命令は俺の流儀に反したから従わなかっただけです。別に気に病む必要はありません。それよりも、旦那様のそばにいてあげてくださいよ。それと、このことは、旦那様には内緒で頼みますよ」
とだけ言うと修哉は颯爽と家族の前から立ち去って行った。
その後姿が見えなくなるまで家族はお辞儀をして見送っていった。
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