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家族の前から立ち去った後、着替えて休憩室に入ったとき
「お疲れ様、修哉」
の瑞穂の声と同時に缶コーヒーが修哉に投げ渡された。
「サンキュー。瑞穂」
と修哉は渡されたコーヒーを飲み始めた。
「なかなか良い演出ね。オペ後教授の様子どうだった?」
「それは傑作だったよ。俺が患者と一緒に出てきた時によりによって家族の前で「金のない命を助けても意味がないだろう!」て本音漏らしてな。」
と修哉が笑いながら言うと
「大方、そこを家族に問い詰められて逃げたとかいうオチでしょうね。」
と言うと、瑞穂が大人な笑みを浮かべた。
「ご名答、その後家族に処分について心配されたけど「俺の流儀を貫いた結果だから気にするな」とだけ言って来たよ。もし、クビになろうが清々しく辞められるよ。」
と言うと修哉は何か吹っ切れたような笑顔を瑞穂に向けた。
「教授の悔しそうな顔が浮かぶわね。でも、そうなれば、あなた明日あたりに査問会議にかけられるわよ?」と真剣な顔で瑞穂が言うと
「まあ、最悪クビ。良くても左遷されんだろうな。でも、こんな病院辞める気だし丁度いいよ」
とさらっと修哉が言った。
「まったく、あなたは気楽ねえ。まあ、それでこそ修哉ね。ならば、最後に教授に大ダメージ食らわせなさい」
とやや呆れながら瑞穂が言うと、白衣のポケットからレコーダーを取り出した。
「これは?」と修哉が聞くと
「手術前の修哉と教授の会話をドアの外から録音しておいたのよ。確認した所、ほぼ最初から録れてるから確実にダメージを与えられるわ。」
と得意げな顔で言った。
そんな瑞穂を見た修哉は
「瑞穂は抜け目無いよな。これなら確実にいけるよ、ありがとうな。」
と瑞穂に笑顔で言うと、瑞穂が少し照れながら
「お礼なんていいわよ。さて、残りの仕事終わらせて明日の査問会議に向けて精を付けに食事に行くわよ。」
とコーヒーを飲みほして空き缶をゴミ箱に投げ捨てた。
「お、良いねえ。鰻でも行くか!」
と修哉も続いて空き缶をゴミ箱に放り込み、休憩室を後にした。
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