死を招くジャックランタン

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たらいが落ちてきたような鈍い音がして、『アワ・シュピンネ』はリングに沈んだ・・・。 灯油缶からこしらえた『大釜』は、ベコベコになってしまったけど、お兄ちゃんは、『初代タイガーマスク』の様に、右手の人差し指を一本伸ばすと、コーナーポストに登って、『ムーンサルト・プレス』を『アワ・シュピンネ』に決めた・・・。   すかさずフォールするお兄ちゃん・・・長い・・・長い・・・沈黙・・・。レフェリーのカウントが『3』を告げた時・・・。お兄ちゃんの勝利が確定した。   「挑戦者『死を招くジャック・ランタン』タイトル奪取です!そして、賞金3,000万円が支払われます!」   興奮したリングアナの言葉に、会場も興奮した・・・。   チャンピオンベルトを手にしたお兄ちゃんは、リングから出て行こうとする『アワ・シュピンネ』に声を掛けた・・・。   「なんで、手を抜いた?」   『アワ・シュピンネ』は、振り返らず、片手を上げると答えた。   「それが、YOUの実力だよ・・・。一足先に『新日』のマットで待っている・・・。まあ、俺も『カワイコちゃんには弱い』と言ったところかな・・・?」   そして、お兄ちゃんに言った。   「『悪霊ジャコ・ランタンの恋心』・・・バレバレだよ。」   『アワ・シュピンネ』は、お兄ちゃんの手を取ると、そのまま、私の元へ・・・。   「HEY!お嬢さん・・・先ほどは失礼・・・。お詫びにこれは私からのプレゼントだ・・・。今日は奇しくも『ハロウイン』・・・『いたずら』を君へ・・・。」 そう言うと、『アワ・シュピンネ』はお兄ちゃんの被り物を外した・・・。そこには照れた顔をしたお兄ちゃん・・・。お兄ちゃんは汗まみれの頭を軽く書きながら言った・・・。   「加々美・・・勝ったぞ!」   「うん・・・お兄ちゃん・・・。」   私はお兄ちゃんに抱きついた・・・。 兄妹たちがリング下からはやし立てる。私は、お兄ちゃんに言った・・・。   「お兄ちゃん・・・大好き!」   「加々美・・・お兄ちゃんじゃない・・・ナオタカと呼べよ・・・。」   大歓声の中・・・おにい・・・ナオタカは私にキスをした・・・。
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