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どうしてこうなってしまったかというと、成り行きだったとしか言いようがない。
マトの両親は他界していた。私が初めて会った小学の時代から亡くなっていた。
マトの親族は誰ひとりとして生きておらず、亡くなっていたため、マトの引き取り手がいなく、幼い時から独りで生きてきた。
マトは児童養護施設に入ることはなかった。そして、どういうわけか養子にしようとしてくる多くの人の誘いを断り、独りで暮らしている。
どうして独りで暮らしているのかと聞いてもマトはいつも話をはぐらかす。馬鹿正直なのにこれだけは話してくれない。
多分、マトのことだから他人に迷惑をかけたくないからというのが大半の理由なんだろうと思う。
それを表に出さないのは、否定されるのが分かっているから。そして、真っ当な言い分が考えられないからだろう。
そうだとしても、そんな子どもの言い分を聞き入れるほど、世間の大人の心は曲がっていないはず。無理を通しても動かそうとするはず。
なのに今もなお、マトは独りで暮らしている。
30坪の敷地にある広い家にたった独りで住んでいる。
私がマトの食事を作り始めたのは小学生の頃からだった。
独り暮らしになれているマトは家事に関してはほぼ完璧だったが、唯一料理に関しては全く駄目だった。というより、無関心だった。
前に見たときにキャベツを1玉をバリバリと夕食といいつつ食べていた時はさすがに唖然とした。マトいわく、朝は米を3合食べて、昼は猪肉を3キロ食べたから、夕食は野菜を丸ごと食べているんだ、などと正気を疑うようなことをいっていた。
どうも一日の中で肉、米、野菜を均等に食べれればいいだろうという考えらしい。
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