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温かな陽射しだ。寒くなった季節の陽光。これに勝るものは数知れないと思う。
そんな事を思いながら休み時間、机に張り付いている。
朝薙 纏は鶴橋中学校に通う中学生。全ての課目成績は凡人。テストも真ん中をうろつくだけの本当に特徴のないもの。顔立ちはいいものの、彼の付けている眼鏡のせいで全てが地味と化している。体格もよいわけではなく、悪いわけでもない。
纏は普通の学生だ。
幼なじみには眼鏡を取れば少しは明るくなっていいんじゃない? と、言われたが眼鏡を取るつもりはない。
纏にとっては眼鏡を外さないことは重要なことだった。
秋の陽光に眠気を感じながら教室を見る。三年生という忙しい時期だけれども大半の生徒が心地よさに負け、机に伏している。仕方ないだろうと納得しつつ、この時間の国語の授業を見る。
先生も仕方がないといった感じで黒板と対話している。生徒たちの生理的現象の前にはどうしようもないと納得したのだろう。
纏は素直に授業を聞こうとは思ったが、止めた。こういう時は授業よりも優先してやるものがある。
纏は机の中から、栞のような小さな紙を取りだし、そこにとても小さな文字を書く。
纏の母国の言葉ではない。祈祷を込めた魔術的な言葉だ。
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