仁美さん。おまけつきの女

2/2
前へ
/177ページ
次へ
おかんが、嫁候補の学歴資格を重視するあまり、仲人は、高学歴で行き遅れ寸前の女性の釣書ばかり持って来たと、前の日記に書いた。 仁美(ひとみ)さんは、行き遅れ寸前の女性ではなく、完全に行き遅れた女性だった。 学歴資格は申し分ない。 京都大学医学部卒で、整形外科医である。 男よりメスを愛しているうちに、行き遅れた。 実家が医家でひとり娘である。ひとり娘を医者にする事には成功したが、後が続かない。本来なら婿取りを望むところだが、この見合いは、相手が長男で、弁護士の卵だから、婿養子前提では相手が承諾しないないだろう、嫁取りやむなし、までは、相手が譲歩していた。 そういう事情なら、種だけ値段つけて売れんもんだろうかと、冗談飛ばして、仲人にいたく怒られた。見合い本番では言うなよ、破談になるぞ3000万円がパーになるぞと、脅された。 仁美さんには、3000万円の持参金が付いていた。 私の父もまた弁護士だったが、司法試験合格が遅く、まだイソ弁だった。イソ弁とは、居候弁護士の略で、自分の法律事務所を持たず、他の弁護士に雇われているサラリーマンである。事務所の開業資金が手に入ると、これは本人より、親が乗り気だった。 が、見合いの席で仁美さんは、焦りを隠さず、まだ閉経はしていないが、生理周期が不安定なことを語った。 仁美さんと結婚したら、妊娠までは、子作り以外の仕事させて貰えんのじゃないかと思わす鬼気迫るものがあった。 お断りしたが、私が3000万円に釣られなかったのは、若かったからで、分別があった訳ではない。 今思い起こして、嫁の前では言えないが、仁美さんは3000万円のおまけと割り切って、貰っとく手もあったのではないか。 仁美さんに3000万円のおまけが付いているのではない。持参金もここまで高額になると、仁美さんの方がおまけである。 が、そもそもが、食っていけるなら、そうあくせくしたくない、リスクは出来るだけ回避して、のんびり暮らしたい私のようなタイプには、どう転んでもこっちが養うしかない障碍者の嫁こそが、釣り合うのかも知れない。 昔から言うではないか 嫁ご持たさにゃ働かん と。 浪費女の破産事件を引き受けてやっと50万なんて仕事、馬鹿らしくて、やってられなくなったかも知れない。 弁護士と医者には、一つの、やりきれない共通点がある。 その共通点とは、 他人の不幸が飯の種。
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加